今年は例年より遅い梅雨入りとなりました。この時期になると、いつも思い出す芭蕉の句があります。
「紫陽花や 帷子(かたびら)時の 薄浅黄(うすあさぎ)」
「帷子」とは、昔の夏用の着物でちょうど梅雨の頃に着始めたそうです。そして「薄浅黄」とは、少し黄色味がかった水色のことで、これは帷子の色と紫陽花が咲き始めた頃の鮮やかな色を表現しています。まさにこの時期の季節を感じさせる句だと思います。季節を衣類や花で感じ取るのは昔も今も同じです。形は変わりましたが、現代に受け継がれる日本の文化のひとつでしょう。
さて、この時期は、長雨が続いたり、晴れたと思ったら、急に激しい雨が降ったり、涼しくなったり、蒸し暑くなったりなど、不安定な天候が続く季節です。子どもたちは新しくできた室内のコミュニティースペースでくつろいだり、梅雨の晴れ間をぬって校庭を元気に走りまわったりと、状況に合わせて楽しく過ごしています。
気候的には憂鬱な季節ですが、梅雨の季節にしかない魅力が聖セシリア小学校にはたくさんあります。校庭の横には熟したウメの実がたくさん落ちていて、辺り一面、甘い香りが漂っています。ビオトープでは、孵化したばかりの小さなメダカの赤ちゃんを観察することができます。校庭のユリやアジサイなどの植物はきれいな花を咲かせ、私たちの目を楽しませてくれています。
状況が悪いことを嘆くだけではなく、その状況だからこそ楽しめることを見つけられると、人生が豊かになります。物事の短所ではなく長所へ目を向けること、物事には悪い面ばかりではなく、見方によってはコインの裏と表のようによい面もあるということを子どもたちにも伝えていきたいと思います。